葵居屋

BL小説を書いている葵居ゆゆのお知らせ用&日常ブログです。
BL的表現や内容が出てまいりますので、ご注意ください。
ついったもやってます→@yuyualthaea

執チョコ番外「執着ブルーデイズ」

2015.12.14 Monday
0
    ここのところ、「執着ブルーデイズ」で検索してブログに来る方がいらっしゃるので、やっぱり読み逃した方もいるよな……と思い、ブログには掲載しない予定でしたが、いったんまとめてみますね。

    今後は新作のたびに、できたらツイッター連載をしたいなと思っているのですが(そうすると、特典つきを買わない場合でも、最低2本番外が読める)どんなふうに公開していくか、またちょっと考えたいと思います。
    本当は新作刊行ごとというより、こう、気が向いたタイミングとかで、独立した短編をツイッター連載してみたいのですが。
    そういうのは、ツイノベとは言わないんですよ、ね?

    素直にpixiv使ったほうがいいかなあ。
    あとは、私が書く時間とアップする心の余裕が持てるかどうかです(笑)

    そんな感じでいろいろ考え中ですが、「執着ブルーデイズ」は『執着チョコレート』の番外編、前日譚です。
    本編に高校生時代が出てきますが、その頃のお話で、攻の高宮一人称です。

    たたんだ先においてみますので、よろしければ読み心地とか教えてください。
    のちほど、pixivにもアップする予定です。

     




     誰かに取られたら困る。

     中学生の頃までは、啓杜は口数が少ないのとあまり笑わないせいでクラスでも目立たない生徒だった。僕――高宮雅悠がかまうせいで、みんなが存在を認識している、という程度。それでも啓杜は少ない友達にはとても大切にされていたし、好かれていて、僕としては充分嫉妬を覚えずにいられなかったのだけど。

     でも、啓杜の魅力に気がつく人間はそう多くない、と思っていたから、高校に入ってクラスが別れてしまっても、それほど心配はしていなかった。

     授業中にこっそり啓杜を眺めたり、休み時間ごとに時間を無駄にせず一緒に過ごせるメリットがなくなったかわり、別々になっても啓杜のほうがちゃんと僕を特別扱いしてくれていると実感できたから、放課後に僕の部屋でのんびり過ごすだけでも、安心していられた。

     状況が変わったのは、三年生になって、ようやくクラスが一緒になったときだった。

     共通の友人である加奈谷が、言ったのだ。

    「啓杜、また告白されたんだって?」

     文庫本を読んでいた啓杜はちらっと視線を上げて、迷惑そうに顔をしかめた。

    「なんで知ってんだよ」

    「女子がさあ、言ってたんだもん。私も断られちゃったけど、優しかったー、って。なんだよそれって感じ。告白されるってだけでも贅沢なのに、断った挙句、断っても嫌われないってどーゆうことだよ」

     加奈谷は拗ねた顔をしてべしべしと啓杜の背中を叩く。むっとして僕は加奈谷の手を掴み、微笑んでみせた。

    「啓杜のこと叩かないでよ」

    「出たー、過保護。ちょっと叩きたくもなるよ、啓杜もてるんだもん」

    「高宮、離してやれってば」

     啓杜は一人冷静だった。

    「俺はもてないよ。たまたまだし、みんな、卒業意識して焦ってるだけだろ」

     啓杜が女子に告白されて断った、というのはほっとしたけれど、告白されたこと自体は大問題だ。

     大事に、大事にしてきたのに、横から取られてしまうなんて絶対に嫌だ。

     女になんか渡せない。

     その日の帰りは午前中の雨のせいで徒歩だった。僕と啓杜の家は近いから、下校もだいたい一緒だ。一緒になるように、去年までは僕がひそかに努力していたのを、啓杜はきっと知らない。

     雨の上がった濡れた道路には、強い風で落ちてしまった桜の若葉があちこちに貼りついていた。弱い日差しに水たまりが光って、空気がいつもよりちょっとだけ綺麗で、啓杜の横顔はその中でとびきり美しく見える。

     眩しく見つめながら、できるだけさりげなく僕は訊いた。

    「ねえ、告白されるの、何回めだったの?」

    「――高宮がそれ訊くのかよ。おまえみたいに多くないよ」

     背が高くなくて華奢な啓杜は、並ぶと抱きしめたくなるような位置に頭があって、見上げる仕草につれて柔らかくて綺麗な黒髪がさらりと揺れた。雨の日は歩いて登下校するのが少し面倒だけれど、啓杜と並んで歩けるのはとても好きだ。

     だって、と僕は素直に言う。

    「啓杜が女の子とつきあったら悲しいもん。僕との時間がなくなっちゃう」

    「なくならないよ。断ったんだし」

     思わず、というように啓杜が小さく笑った。しょうがないな、と思ってるときの顔だった。優しくて可愛い。

     僕はそっと啓杜の腕に触れる。

    「ねえ、何人? 教えて」

    「しつこいなあ。――二人だよ」

    「二人。それ、いつの話?」

    「……一人は、二年の終わりのときで、二人めは、先週の金曜」

     啓杜は言いにくそうにぶっきらぼうな声で言って、うなじを片手で撫でた。そう、と僕は目を細める。

    「二年生のときにも、告白されたんだ?」

    「なに不機嫌な声出してるんだよ。高宮のほうが、もっといっぱい告白されてるだろ」

    「僕はどうでもいいんだ。絶対、誰ともつきあわないから」

    「絶対って」

     びっくりしたように啓杜が見上げてきて、僕は目いっぱい微笑んだ。

    「だって啓杜のほうが好きだもん」

    「――馬鹿」

     みるまに、啓杜の頰が赤くなって、それを見ると僕の胸の内側も、ふんわり赤く染まっていく。

    「啓杜、僕ん家寄っていって。宿題一緒に片付けちゃおうよ」

    「……ん」

     照れてそっけなくなる態度も愛おしい。僕は我慢できずに手を伸ばした。

    「――なにしてんの」

     きゅっと眉を寄せて啓杜が睨んだ。まだ顔が赤くて、僕は微笑む。

    「手、つなぎたくなった」

    「小学生みたいなことするなよな」

     啓杜は掴まれた手を振りほどこうとしたけれど、僕は離さなかった。国道を渡る歩道橋の階段を、手をつないだまま登って、一番上で手を引いた。

     なんだよ、と言いたげにこちらを向いた啓杜の唇を、そっと塞ぐ。さらりと乾いてあたたかく、そして柔らかい唇だった。

     想像よりもずっとどきどきする感触に、目眩がした。

    「――」

     啓杜は、怒ったり、余計に赤くなったりするかわりに、なんとも言えない顔で僕を見た。戸惑って、表情を選び損ねたような無防備な顔に、せつないもどかしさがこみ上げる。

    「嫌だった? 啓杜」

    「嫌、っていうか……なんで」

    「手をつないだら、もっとくっつきたくなったから」

    「……」

    「僕が世界で一番好きなのは啓杜だなって思ったら、したくなったんだ」

     そう言っても、啓杜はなにも言わなかった。ただふっと目を潤ませ、ごまかすようにまばたきし、ぎゅっと口を引き結ぶ。

     それは強がるときの顔だった。転んで怪我をして痛いときなんかに、我慢する顔。

     啓杜が我慢する顔を見ると、せつなくて、僕のほうが痛くて泣きたくなる。

     今も胸が刺されるように痛んで、泣きたくなった。

    「啓杜」

    「……なに」

    「好きなんだよ」

     こんなことを言って嫌われたらどうしよう、と少しだけ思う。でもどこかで、啓杜は僕がなにをしても、嫌いになったりしないのではないか、という甘い期待もあった。たいていのわがままは、啓杜は聞いてくれるから。

     もし、気持ち悪いとか、嫌だと思われているなら、啓杜は手を振りほどくはずだ。でも、僕が握った啓杜の手は、力なく、おとなしく、僕に掴まれたままぽかぽかとあたたかい。

    「――――知ってる」

     長々と黙ったあげく、啓杜はぽつんとそう言って足を速めた。くん、と手がひっぱられ、離れそうになって、僕は慌てて握り直す。

     数秒遅れて、胸の内側がしびれるように熱くなった。

     啓杜。

     抱きしめて今すぐにでももう一度キスして、部屋についたら服を脱がせて、全身撫でて、舐めて、僕のものにしてしまいたい。

     でも、一歩前を行く啓杜の耳やうなじは赤い。少し俯いて歩くのはきっと恥ずかしさを堪えているせいだ。早足なのは、照れているから。

    (今さら、焦ったって仕方ないよね)

     出会ったときから、恋人同士になるのを僕は夢みてきた。今年で七年になる、長い長い夢の成就を、今さら、焦る必要はない。

     だって啓杜は、絶対に僕のものだ。誰かに横槍を入れられたって、渡す気はない。少しでも啓杜が僕を好きでいてくれるなら、誰にもあげない。

    「今年のクリスマス、一緒に過ごそうね」

    「――なんだよ急に」

    「親、二人ともいないからさ。啓杜と一緒がいいなと思って。駄目?」

    「そっか……。いいよ」

     少しのあいだ啓杜の足がとまった。僕が横に並ぶのを待って、何事もなかったように歩き出す。濡れたアスファルトを踏むスニーカー。考え込むように生真面目な横顔、猫みたいなアーモンドアイ。

     クリスマスになったら、と僕はひっそり微笑んだ。これが全部、僕のものになる。

     同時に、僕は全部、啓杜のものになるのだ。

     なにも余さず、残さず。

     そのためには、家に着いたらすぐにでも、またキスをしよう。

     僕たちは「仲のいい友達同士」を卒業するのだから、徐々に啓杜にも、僕を恋人にする準備をしてもらって、身も心もひとつになろう。 

    「約束だよ、啓杜」 

     決意を秘めた僕の声に、啓杜はちらりと視線をよこして、それから小さく頷いた。なにも知らないだろう彼に、これから七か月かけて、少しずつ恋人同士になることを自覚させる過程を思うと、僕はたまらなくわくわくした。

    終わり。

    拍手ご感想はこちらから(拍手フォーム)

     


    コメント
    コメントする








       
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    calendar

    Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    2627282930  
    << November 2017 >>

    ご説明

    葵居ゆゆ/aoi yuyu
    小説を書くお仕事。主にBLを書いてます。
    初めておいでの方は「はじめに」エントリをご覧ください。
    ご連絡などありましたら「はじめに」記事かプロフィールページから、メールフォームをご利用ください。

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    • 2017年7月の近況とお礼
      葵居
    • 2017年7月の近況とお礼
      みーくん
    • 【5月25日まで】KADOKAWA BLライトノベルリレーフェア2017GW
      葵居
    • 【5月25日まで】KADOKAWA BLライトノベルリレーフェア2017GW
      K/M
    • 掲載SS一覧
      葵居
    • 掲載SS一覧
      まあみ
    • 掲載SS一覧
      葵居
    • 掲載SS一覧
      まあみ
    • 『愛傷コレクション』キャラ紹介
      葵居
    • 『愛傷コレクション』キャラ紹介
      もん

    links

    profile

    書いた記事数:533
    最後に更新した日:2017/11/17

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM